寒ブリとパクチータルタルの菜の花ニソワーズ【ソムリエが教える「エッグ」なサラダvol.2】
■具材を楽しむフレンチの定番サラダニソワーズ、ご存知ない方は是非一度召し上がっていただきたいサラダです。
私はこれがとても好きで、ソムリエ時代に「佐藤さんニソワーズ好きだから」と私の誕生日の賄いに、キッチンスタッフがわざわざ作ってくれたことを思い出します。
それほどにニソワーズは好きなサラダなのです。
ニソワーズとは、シンプルな味付けで普通のヴィネグレットで出されることが多く、種類の多い具材を素材の味そのままに楽しめるフレンチの定番サラダです。
フランスには「サラダ・リヨネーズ」もあります。
まあ、もっともっとローカルなサラダもあるでしょうが、世界中で知られているメジャーなサラダはそれ程ないかもしれません。
それぞれ土地の名前が付けられており「サラダ・ニソワーズ」は南仏プロヴァンスにあるニースのサラダ。
つまりは「ニース風」。
「サラダ・リヨネーズ」はブルゴーニュとアヴィニヨンのちょうど真ん中あたりオーヴェルニュ・ローヌ・アルプ圏の都市リヨンのサラダです。
こちらも「リヨン風」となります。
■海と大地の恵み「サラダ・ニソワーズ」ニースはイタリアの西端ピエモンテ州の国境まで約15km程の地中海沿岸です。
その昔1388年から1860年までの約470年間、イタリアを統一していく「サルデーニャ王国」の前身「サヴォイア公国」に属していたそうで、ほぼイタリアと言っても過言ではない地域ゆえ、強くイタリア文化の影響を受けているようです。
食材に関してもイタリア共通の物が多く見られます。
特に「サラダ・ニソワーズ」に関していえば「ツナ」を使用することが特徴で、その他にはトマト、オリーブ、ニンニク、アンチョビ、ハーブ類、またインゲン、茹でたジャガイモ、ゆで卵なとが定番的で定義的な食材です。
まさにこの時期、5月の終わりから6月の終わりまでの1か月が地中海のマグロ漁の旬にあたり、アンチョビの原材料となるカタクチイワシの旬も5月に始まるそうです。
そしてワインでもプロヴァンスの地産のロゼが夏至の日に解禁になる物があるほど。
初夏の海と大地の恵みを楽しむ郷土料理であるようですね。
■玉ネギの一大産地「リヨネーズのサラダ」一方リヨネーズはというと、こちらは「玉ネギ」の一大産地です。
こちらはサラダ以外もソースやガルニチュールでも有名でとろとろになるまで炒めたオニオンが使われます。
ジャガイモを合わせた代表的な家庭の味「ポム・リヨネーズ」などもその一つ。
サラダでも「オニオンリング」と「ウフ(卵)・ポシェ(湯がく)」と呼ばれる半熟卵が載っていて、ドレッシングにマスタードが使われることが「サラダ・リヨネーズ」の定義のようです。
どちらのサラダも地元の作り手によって様々でしょうし。
料理には著作権も国境もありませんから、自由な解釈やアレンジがあるからこそ面白いのですね。
■ロマンと卵と「シーザーサラダ」日本では一番有名であろう「シーザーサラダ」だって「ジュリアス・シーザーが愛したサラダだ」とか「ローマのプンタレッラで作ったマンマの味がアメリカでロメインレタスに変わった」とか諸説あります。
どうやら文献的に有力な起源は1920年ごろの禁酒法時代にハリウッドで働くアメリカ人が、ほど近いメキシコのティファナへ酒を求めて行き、料理人シーザー・カルディーニ氏が経営するレストラン「シーザーズ・プレイス」で即興で作ったものがそれに当たるようです。
とはいえ2つの俗説はいずれも「そうであったら面白そう」なロマンあふれるお話ですね。
そうそう、そして面白いことに初期のティファナのシーザーサラダにも「半熟卵」が載っていたそうな。
卵は大人気です。
更にはソースにも卵黄が使われ、ビネガーとオリーブオイルなどを乳化させたドレッシングやマヨネーズ的なものが使われていたようです。
■おうち時間の笑顔のために愛を込めて起源を辿ればフレンチだって、イタリアのメディチ家の功績が大きいのですが、各地で発展し新大陸にまで伝わり、日本にまで届いたのはとても面白いことです。
食に限らずワインに限らずお酒も含めた人々の「欲求」や「追求」は脈々と永遠に続くようです。
今こうして、世界中がコロナの時代にて生活スタイルも食文化も変化を余儀なくされています。
緊急事態宣言が発令され、たくさんの問題を抱えつつ、それでも人は食べなければ生きられません。
生きるための栄養だけでなく、心